気持ちを共有するとか、そんな事は考えてない。


朝日がまぶしい。
寮、十四郎の部屋。
日当たりがよく、眩しさで目が覚めることもしばしば。
日の光とともに早起きして、身支度を整える。
そろそろ朝食かな、と思った瞬間、
喀血。

「…今日は無理かな」

一人部屋でボソっと呟き、震えだした手で水差しを取る。
湯飲みに注ぎ、口に含む。
生ぬるく血の味が口内に広がる。
不快感は否めない。
台所の排水に吐き出せば、赤く染まった。
そのまま、崩れ落ちるようにしゃがみこむ。
胸が苦しい。咳をする度、小さく血が飛んだ。
目を閉じて、意識を手放す。

ふと目を開ける。夕刻のようだ。
欠席届を出していない。そんな事を考えながら、
辺りを見回す。
自分は寝具に横たわっていて、
部屋は片付いている。
ゆっくりと首を横に向けると、白哉が座ったまま寝ていた。

「あ、起きた?」

台所の方からひょっこりと喜助が顔を出す。

「来ないから様子見に来たんだけどね」

何か大惨事だったから二人ともサボっちゃった。
頬をかきながら笑う。
成る程、ずっと傍に居てくれたらしい。

「…じゃあ、無断欠席したのか…?」

ようやく喉から出た精一杯の声で問う。
うん、と喜助はあっさり頷いた。

「…済まん」

安い小説を読んだときのような感動におそわれ、
涙が出そうになる。
十四郎は目を押さえた。

「気にするほどの事か」

アラ、と喜助が白哉の方を向く。
どうやら狸寝入りだったか。もしくは今起きたのか。

「…白哉」

黙れ、と制される。
まだ少し喉の奥で血の味がした。
目が熱い。
喜助の軽い笑い声がした。

「今日はつまんない演習だったハズだから」

台所と寝間の境に座って、喜助が言った。
サボれてよかったよ。

「浮竹」

白哉が言う。
目を向けても、白哉は十四郎を見てはいなかった。
何も言わないのでずっと見ていると、
一度息を深くついて、続けた。

「兄は少々無理をしすぎだ」

照れくさそうに言う白哉に、驚く。
心配してくれていたと思うと、嬉しさで胸が苦しい。
喜助が白哉ににじり寄って、
からかっている。

「…ッ」

思わず、泣いてしまった。

二人に抱きついて、声を押し殺して泣いた。
嬉しくて嬉しくてたまらない。
抱きついた瞬間、すぐに二人とも抱き返してきた。
喜助は髪の毛を撫でてくれた。

思い切り泣いて、空が暗くなり始めた頃、
喜助がぽつりと呟いた。

「…そろそろ門限でしょ?」

白哉の方を見る。
白哉は少し考えてから、立ち上がり、
押入れをあさり始めた。

「綺麗な布団はないのか」

予想外の台詞に、二人で目を大きく開く。
奥のほうから使っていない布団を二組、白哉は取り出した。

もう出ないと思っていた涙が、
十四郎の目からまたこぼれた。


あ、何か後味悪い(第一声がソレかい) 白哉は実は優しいんですよって話ですよ。 でも浮竹泣かしたのは失敗だったかなぁ…。ううむ。
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