ちらちら。
舞う雪。
ほう、と息を吐けば白く。
寒さに身を縮める。
庵に入れば酒の匂いがした。
行灯の明かりが暖かい。
障子を薄く開けると、春水がいた。
「おかえり」
人の部屋に勝手に上がりこんでおいて、笑った。
俺はぼんやりとそれをみつめる。
「耳赤い。鼻も」
おいでおいでと手を拱く。
俺もたいがいでかい方だが、
春水はもっと大きい。
故に父親のようだった。
「ホラ暖かい」
誘われるままに近寄れば抱きすくめられる。
少々肌蹴た胸に頭を押し付けられ、正直気持ち悪い。
「春水、胸毛」
「いいじゃん」
やだよ。俺は春水の胸と自分の頭に少し間隔を開けた。
さびしそうな顔をする春水の髭をつんつん引っ張る。
痛い痛いと春水は暴れた。
「酒入ってるんだろ」
「んー。十四郎も飲む?」
「当たり前だろ」
視界の端にあった熱燗を顎でさす。
春水は猪口を一つ手渡し、注いでくれた。
酒は久しぶりで、何だか味がわからなかった。
「春水」
「何」
「雪」
言えば春水は閉じられた障子を見た。
見に行くかと思ったら春水はそのまま座っていた。
「寒かった?」
「うん」
暖かい室内。
春水がずいずいとにじり寄ってきたかと思えば、
胡坐をかいている俺の膝元に倒れこんできた。
「はー疲れた」
「何に」
問うと春水は目だけ俺に向けた。
そしてにやりと笑う。俺は春水を小突いた。
「雪遊びしてたの。十四郎遅いから」
ほら。
足元を指差すと真っ赤な皮膚が目に付いた。
痛そうだ。
「馬鹿じゃないの」
「馬鹿だよ」
矢張りどこか寂しそうな春水を見る。
目は俺を見ては居ない。障子。
「霜焼けになった」
「だろうな」
そういえば。
「ん?」
「十四郎の髪の毛も雪みたいに白いよな」
目が細まる。
障子を見たまま。
外はまだ、雪が降っている。
「…どういう意味?」
「別に」
単に思っただけなのかもしれないが、
顔が、声が、妙に意味深で気になった。
春水は何も言わなかった。
「…」
「霜焼け」
「は?」
なんでもない。春水はそう言って目を閉じた。
外はまだ、雪が降っている。
「春水」
「ん」
「霜焼け…なるなよ」
「うん」
『ずっと触ってると、霜焼けになりそう』
声は出さずに口だけが、そう動いていたのを、見逃さなかった。
えー…っと。
春水スキです。
大人の恋愛っていうのをかきたいんですけど上手くいきませんネェ。
どうしたものやら。